タレントマネジメントスペシャリスト"まりあっち"のブログ。
今年も、3ヶ月にわたって計9日間になる営業部門の選抜プログラムを終了した。3年目、3回目になる当プログラムだが、過去2期の参加者を上回る熱意と意欲でもって課題の掘り下げを行い、提案の完成には至らないまでも来月か再来月の営業部門の幹部会議に提案をプレゼンする準備を終えた。
この研修が生まれた背景は、当社の社員の半分以上を占める営業部門において、部門長や部長クラスを将来担う人材がいないという危機感からだった。人事部長である私の上司が「文句を言う評論家ばかりで自ら問題や課題を発掘して建設的な提案に展開できる人材がいない。優秀な人材を集めてきちんと論理的思考の方法を教え、リアルな現実の中から課題を分析して提案できるようなプログラムをつくれ」と私にハッパをかけたことに始まる。
そのアイディアをもらって、当初は2.5日×4セッションのプログラムを設計した。最初のセッションで論理的思考法を外部の講師に教えてもらい、残りの3セッションでは講師と私と営業部門の部長の共同運営の下で、グループに分かれた参加者が問題の分析を行い、解決策を含めた提案に完成させる、というものだ。完成した提案は、後日、グループの代表によって営業部門の会議でプレゼンされ、その提案が本当に良ければ実際に採用してもらう、というコンセプトになっている。言ってみれば、若手の幹部候補に会社の具体的な問題について提起させる「ジュニアボード」と、実務課題の発掘と問題解決のプロセスを通じて学ぶ「アクションラーニング」を混ぜたプログラムだ。
このプログラムを受け入れてもらうには、いくつかハードルがあった。
まず、2日間を超える長い研修を嫌う営業部門が、合計10日間の長い研修に合意するかどうか。営業部門に持って行ったら、若手幹部の育成には反対しなかったものの「もっと短くならないか」と案の定言われた。しかし、学習プロセスにはこれだけの期間が必要だと述べたところ、営業部門長(当時)は10日間の長さが必要であることを認めてくれた(昨年から、より密度の濃いディスカッションの時間が取れるように、3日間×3セッションの9日間セッションが試され、こちらの方が効果的とわかった)。
次に、トップクラスの業績を挙げている優秀な営業部員を10日間近くも現場から離すことを支店長が認めるかどうか、かつ本当に優秀な部員を出してくれるかどうかだった。これについては、様々な営業部門改革が進んでいた年で支店長の顔ぶれも一新していたこともあり、一回のプレゼンですんなり通ったのは(昔の営業部門の体質からすれば、考えられなかったのだが)今でもありがたいと思っている。そして、一度そういう企画でプログラムが決まれば、他の支店長が出して来る参加者と見劣りする参加者を送り出すのはまずいという判断が働いたかどうか、少なくとも営業成績では他の支店にも名が知られているような優秀な部員を送り出してくれている。
そして、主催者側としての次の関門は共同運営できる外部講師。これには、別の部門の研修実績があるコンサルタントのグループを(営業部門の幹部立ち会いのプレゼンを通じて)選んだ。ひとりは営業部門改革が得意、もうひとりは論理的思考法やファシリテーションにも造詣があり、もうひとりはマーケティングが本業だが人や組織の問題についても論客であるという理想的な組み合わせだ。彼らはプログラム期間中のおよそ半分に参加し、論理的思考力やディスカッションの方法を教え、参加者がディスカッションした途中経過の発表で厳しくも温かいフィードバックを送ると共に、プロセスから何を学んでいるかを確認していく。
さらに工夫しているのが、社長、営業部門トップにプレゼンしてもらうだけでなく、実際の課題に取り組んでいる部長級の幹部を、参加者の関心(3グループに分かれて各自で課題設定をしている)に応じて期間中に引っ張り出し、問題提起してもらったり現在取り組んでいるプロジェクトについて解説したりしてもらうことだ。これには、営業部門の中で主に営業部員の製品知識やスキル研修を担当している部署の部長がコーディネーション役を買って出てくれ、私と一緒にプログラムにほとんどべったり貼り付きながら必要に応じて調整をしてくれている。要所要所のプレゼンでは、私と一緒に各チームの問題の掘り下げ方や論理の組み立て方について批評し、必要な視点を補完してくれている。
今年になって営業部門のトップが交替したが、プログラム開始のプレゼンや懇親会への出席にとどまらず、土曜日というのに昨日の最終日にサプライズで顔を出してくれ、長いプログラムを終えた参加者を激励してくれた。
第1セッションと第2セッションの合間には、宿題と称して参加者には支店長にインタビューに行ってもらい、支店をマネジメントするというのはどういうことか、戦略課題をどう見てどう手を打っているか、などを聞き出してもらう。これがまた支店長を関与させることになり、支店長は最低でも1時間、長い人になると5時間以上にわたって参加者に時間を取ってくれて(汗)、食事や酒をはさんでマネジメントについてレクチャーしてくれている。
で、私たち人材開発チームは、研修会場の設定や講師との調整に加えて、各チームの状態を把握し、必要に応じて営業部門の手助けを依頼する。
こんな具合で3年間やってきているのだが、我々主催者側以外の方々の協力が大きく、また社長が各支店を回って様々な話し合いをする機会をとらえては宣伝してくれていることもあって、すっかり営業部門の若手にとっては垂涎のプログラムとなった。
さらに我々は、このプログラムの中から本社に移れそうな資質・能力(主に論理的思考力と対人コミュニケーション力)の高い参加者に目をつけて選抜し、本社で要求される英語をマンツーマンで学べるプログラムを去年から提供し始めている。
そして、このプログラムの出身者から、営業所長に昇進する者あり、マーケティング部門に転じてジュニアプロダクトマネジャーになる者ありと、営業部門の若手の登竜門として機能しつつある。今年は特に目立つ優秀な参加者が多かったので、さらに活躍する卒業生が増えることだろう。
提案の方だが、今のところ実際に採用されるレベルの提案を上げてくるグループは、去年までなかった。それでも、初年度は「こんなことを幹部に提案していいのか」とおっかなびっくりディスカッションしていた状況から少しずつ変わり、今年に至っては独自に顧客アンケートを取ったりするなど自主的な姿勢が強くなってきた。提案で取り上げるテーマも、確実にレベルが上がっている。今年辺り、採用される案件が出るのではないかと楽しみにしている。
このプログラムに関しては、支店長からも「このプログラムはいい。少なくとも5年は続けるべきだ」と言ってくれており、これを続けることによって確実に営業部門の中に問題発掘・問題解決志向と学習する志向を定着させていくことができるのではないかと期待している。
この研修が生まれた背景は、当社の社員の半分以上を占める営業部門において、部門長や部長クラスを将来担う人材がいないという危機感からだった。人事部長である私の上司が「文句を言う評論家ばかりで自ら問題や課題を発掘して建設的な提案に展開できる人材がいない。優秀な人材を集めてきちんと論理的思考の方法を教え、リアルな現実の中から課題を分析して提案できるようなプログラムをつくれ」と私にハッパをかけたことに始まる。
そのアイディアをもらって、当初は2.5日×4セッションのプログラムを設計した。最初のセッションで論理的思考法を外部の講師に教えてもらい、残りの3セッションでは講師と私と営業部門の部長の共同運営の下で、グループに分かれた参加者が問題の分析を行い、解決策を含めた提案に完成させる、というものだ。完成した提案は、後日、グループの代表によって営業部門の会議でプレゼンされ、その提案が本当に良ければ実際に採用してもらう、というコンセプトになっている。言ってみれば、若手の幹部候補に会社の具体的な問題について提起させる「ジュニアボード」と、実務課題の発掘と問題解決のプロセスを通じて学ぶ「アクションラーニング」を混ぜたプログラムだ。
このプログラムを受け入れてもらうには、いくつかハードルがあった。
まず、2日間を超える長い研修を嫌う営業部門が、合計10日間の長い研修に合意するかどうか。営業部門に持って行ったら、若手幹部の育成には反対しなかったものの「もっと短くならないか」と案の定言われた。しかし、学習プロセスにはこれだけの期間が必要だと述べたところ、営業部門長(当時)は10日間の長さが必要であることを認めてくれた(昨年から、より密度の濃いディスカッションの時間が取れるように、3日間×3セッションの9日間セッションが試され、こちらの方が効果的とわかった)。
次に、トップクラスの業績を挙げている優秀な営業部員を10日間近くも現場から離すことを支店長が認めるかどうか、かつ本当に優秀な部員を出してくれるかどうかだった。これについては、様々な営業部門改革が進んでいた年で支店長の顔ぶれも一新していたこともあり、一回のプレゼンですんなり通ったのは(昔の営業部門の体質からすれば、考えられなかったのだが)今でもありがたいと思っている。そして、一度そういう企画でプログラムが決まれば、他の支店長が出して来る参加者と見劣りする参加者を送り出すのはまずいという判断が働いたかどうか、少なくとも営業成績では他の支店にも名が知られているような優秀な部員を送り出してくれている。
そして、主催者側としての次の関門は共同運営できる外部講師。これには、別の部門の研修実績があるコンサルタントのグループを(営業部門の幹部立ち会いのプレゼンを通じて)選んだ。ひとりは営業部門改革が得意、もうひとりは論理的思考法やファシリテーションにも造詣があり、もうひとりはマーケティングが本業だが人や組織の問題についても論客であるという理想的な組み合わせだ。彼らはプログラム期間中のおよそ半分に参加し、論理的思考力やディスカッションの方法を教え、参加者がディスカッションした途中経過の発表で厳しくも温かいフィードバックを送ると共に、プロセスから何を学んでいるかを確認していく。
さらに工夫しているのが、社長、営業部門トップにプレゼンしてもらうだけでなく、実際の課題に取り組んでいる部長級の幹部を、参加者の関心(3グループに分かれて各自で課題設定をしている)に応じて期間中に引っ張り出し、問題提起してもらったり現在取り組んでいるプロジェクトについて解説したりしてもらうことだ。これには、営業部門の中で主に営業部員の製品知識やスキル研修を担当している部署の部長がコーディネーション役を買って出てくれ、私と一緒にプログラムにほとんどべったり貼り付きながら必要に応じて調整をしてくれている。要所要所のプレゼンでは、私と一緒に各チームの問題の掘り下げ方や論理の組み立て方について批評し、必要な視点を補完してくれている。
今年になって営業部門のトップが交替したが、プログラム開始のプレゼンや懇親会への出席にとどまらず、土曜日というのに昨日の最終日にサプライズで顔を出してくれ、長いプログラムを終えた参加者を激励してくれた。
第1セッションと第2セッションの合間には、宿題と称して参加者には支店長にインタビューに行ってもらい、支店をマネジメントするというのはどういうことか、戦略課題をどう見てどう手を打っているか、などを聞き出してもらう。これがまた支店長を関与させることになり、支店長は最低でも1時間、長い人になると5時間以上にわたって参加者に時間を取ってくれて(汗)、食事や酒をはさんでマネジメントについてレクチャーしてくれている。
で、私たち人材開発チームは、研修会場の設定や講師との調整に加えて、各チームの状態を把握し、必要に応じて営業部門の手助けを依頼する。
こんな具合で3年間やってきているのだが、我々主催者側以外の方々の協力が大きく、また社長が各支店を回って様々な話し合いをする機会をとらえては宣伝してくれていることもあって、すっかり営業部門の若手にとっては垂涎のプログラムとなった。
さらに我々は、このプログラムの中から本社に移れそうな資質・能力(主に論理的思考力と対人コミュニケーション力)の高い参加者に目をつけて選抜し、本社で要求される英語をマンツーマンで学べるプログラムを去年から提供し始めている。
そして、このプログラムの出身者から、営業所長に昇進する者あり、マーケティング部門に転じてジュニアプロダクトマネジャーになる者ありと、営業部門の若手の登竜門として機能しつつある。今年は特に目立つ優秀な参加者が多かったので、さらに活躍する卒業生が増えることだろう。
提案の方だが、今のところ実際に採用されるレベルの提案を上げてくるグループは、去年までなかった。それでも、初年度は「こんなことを幹部に提案していいのか」とおっかなびっくりディスカッションしていた状況から少しずつ変わり、今年に至っては独自に顧客アンケートを取ったりするなど自主的な姿勢が強くなってきた。提案で取り上げるテーマも、確実にレベルが上がっている。今年辺り、採用される案件が出るのではないかと楽しみにしている。
このプログラムに関しては、支店長からも「このプログラムはいい。少なくとも5年は続けるべきだ」と言ってくれており、これを続けることによって確実に営業部門の中に問題発掘・問題解決志向と学習する志向を定着させていくことができるのではないかと期待している。
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